第33期開講にあたり〜科学・技術と自然との共生を考える〜


 私たちは、知的で幸せな日常生活を送っているのでしょうか?
 確かに携帯電話やパーソナルコンピューターの使用とインターネットから得られる情報等、私達の日常生活を豊かにしているものが身の周りに多くあります。医学の分野でも、再生医療、内視鏡手術、遺伝子解析とその医療への応用は、難病や治療不可能と言われた病気の治療を可能にしつつあります。
 18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命により、私たちの日常生活の幸福の定義は全く異なってきました。
学長

理事長・学長 梶山 千里

福岡女子大学理事長・学長
前九州大学総長



革命前は天然の生産物の有効利用による生活の変化・向上が主な進歩でした。産業革命以後は、人間の知恵により自然界に存在しない物の生産が可能となり、新しい科学技術の応用が生活の進歩に多大な寄与をしています。しかし、それは長く続くものではありません。地球に存在しなかった物を作り出す科学・技術は、地球に負荷を掛けることにもなるからです。
 最近の地球上の自然現象は、ほんの2年前と比較しても異常としか思えません。平均気温は100年で0.8℃上昇しています。平均的に1℃の変化は、自然、特に生物や漁業に大きな影響を与えます。ここ数年、日本では台風や豪雨などによる被害はほぼ毎年起こり、世界を見渡しても、干ばつによる穀物生産低下、森林火災、大洪水、暴風雨被害等、数え切れない程の災害の報告がなされています。これらは地球の自然の営みを著しく変えた科学・技術による変革がもたらした人間への報復ではないでしょうか。
 新しい科学・技術から恩恵を受けつつ、傷ついた自然の報復とのバランスを同時に行なう知恵を生み出すこと。人間が地球から受ける恵と幸をもう一度じっくり考える時が来ているのではないでしょうか。



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